十一人の賊軍 (2024):映画短評
十一人の賊軍 (2024)ライター3人の平均評価: 4.3
今観るべき、熱血群像時代劇
名脚本家、笠原和夫のインタビュー本「昭和の劇」によると、昭和39年に書かれた『十一人の賊軍』のオリジナル脚本は350ページもあったとか。それが残っておらず、本作は白石監督が現存する16ページのプロットから発想を広げていったという。
明治初期版『スーサイド・スクワッド』!?と思って見始めると、話はどんどん熱を帯びてくる。死刑囚たちの各々の死生観が戦場でのギリギリの生き様に反映された格好だ。
とりわけ山田孝之ふんする主人公のキャラは強烈。逃げることばかり考えていて、なかなか戦わないが、その気持ちの変化が面白い。とにかく生き続けること、どう生きるかを考えること、その意味を問う熱血作。
現代に蘇る東映集団抗争時代劇
笠原和夫による幻のプロットを入手した白石和彌が、現代に蘇らせた東映集団抗争時代劇。刀はちゃんとスパッと切れるし、鉄砲は当たると穴が開くし、大砲が当たると建物も人もバラバラに吹き飛ぶ。『SHOGUN 将軍』を意識したような人体破壊描写も織り交ぜつつ、155分の長尺を最後まで突っ走る。武家社会に生きる仲野太賀の折り目正しい時代劇の芝居と、現代人に近いメンタリティを持つ山田孝之のカジュアルな芝居の対比も面白い。人は誰のために戦うのか、人の命の重さは平等なのか、平和のための戦争にどんな意味があるのか、そんなことを考えていたら、あっという間にエンディングだった。東映剣会会員の本山力がカッコいい。
想像通りの大力作!!
東映集団抗争時代劇、幻の企画が60年の時を超えて遂に映画化。映画の中にはこれは会社の責務、義務として創り上げなくてはいけないものがありますが、これはまさに東映にとっての”創らなくてはいけない映画”でした。2時間半と長めの上映時間ですが、とにかく見どころが多くて飽きさせません。山田孝之はもちろん大河ドラマも控える仲野太賀も超大作の主演としてとても頼もしく映りました。この二人を含む11人の賊軍の面々に加えて、奥羽越列藩同盟側も官軍側も出てくるキャラが皆濃くて忘れがたい者たちなっています。大画面で堪能したい逸品です。