アマチュア (2025):映画短評
アマチュア (2025)
ライター5人の平均評価: 3.4
老女に勝てなくてもテロリストには勝てる!?
“90歳の老女と腕相撲をしても負ける”と言われた内勤の軟弱CIA局員が、テロリストと戦うという設定は、確かに引きがある。殺された妻の復讐にも説得力が。それらを主人公の感情に重点を置き、描いている点がいい。
CIAゆえ、妻の暗殺時の監視カメラ映像を何度も再生しては悲観に暮れる主人公。その描写の妙は、機密にアクセスできないことが幸せだったのでは?と思えるほどだ。
戦闘こそアマチュアだが、情報分析や機械系には強く、そこからの戦略のち密な組み立てを丁寧にたどっているのも高ポイント。素人感を体現するラミ・マレックのハマリ役ぶりも光った。
オリジナルへのリスペクトは強く感じる
CIAの分析官が愛する者の命を奪ったテロリストへの復讐を誓う、ロバート・リテル原作の映画化をリメイク。オリジナルでジョン・サベージが演じた理系な主人公を継承したラミ・マリックはプロデュースを兼任するほど気合いは入っているが、如何せん40年以上経っているため、米ソ冷戦下のスパイ映画だったときの面白さが生かされず。プール爆破など、オリジナルへのリスペクトは感じるものの、『マトリックス』を想起させるローレンス・フィッシュバーンとの訓練シーン以降は、かなり粗く、大味な印象を持ってしまう。妻役のレイチェル・ブロズナハンの無駄遣いといい、いろいろとリメイクの難しさを思い知らされる。
そつなくまとまったアクションスリラー
多くのスパイアクションスリラーとは違ったタイプの主人公に、ラミ・マレックはハマリ役。前半のパリのシーンや後半のプールのシーンなど、いくつか面白いアクションもある。ただ、全体的にそつなくまとまっている感じ。ポップコーン映画なので話は必ずしも現実的でなくて良いのだが、それを忘れさせるほどの新鮮さ、エンタメ性、個性がないのだ。残念なのは、助演の名役者たちの無駄遣いぶり。とくに妻を演じるレイチェル・ブロズナハン。主人公のモチベーションを観客に思い出させるためか、やたら妻のフラッシュバックが出てくるが、感情を高めるというよりエミー賞女優の「そこにいるだけ」ぶりを際立たせ、歯痒い。
難解パズルが解体を目撃するような映画
ラミ・マレックで大型企画の主演作品となるとそれこそ『ボヘミアン・ラプソディ』以来ですね。CIAの分析官ではあるもの荒事には全く不得手な男が自身の情報解析能力を駆使ししてテロリスト集団に復讐を果たしていく変化球スパイアクションになっていました。とにかく、分析能力とIT技術を駆使してテロリスト集団に迫ってく行く様がスピーディーな演出も相まって、とても爽快です。とても難しいパズルが目の前で凄まじいスピードで解かれていく様を見続けるような映画でした。通常よりさらに細身になるという逆身体づくりも説得力がありました。各国を往来する辺りなどオーソドックスなスパイもの感を感じる部分もありました。
事務系職員によるユニークな復讐劇
殺人についてはアマチュアだが、情報の収集と分析はプロフェッショナル。そんなIQ170のCIA分析官が、自分のやり方で復讐を実行するというヒーロー像がユニーク。その過程が丁寧に描かれるので、物語はストレートだが密度は高い。主演のラミ・マレックがプロデュースにも参加、彼が自分の俳優としての資質と特性を活かす役として、こうした人物像を選んだことも興味深い。
共演が、ジェームズ・ガン版『スーパーマン』のレイチェル・ブロズナハン、「Marvel パニッシャー」のジョン・バーンサル、「マインドハンター」のホルト・マッキャラニー、「ドリーム・シナリオ」のジュリアンヌ・ニコルソンとさりげなく豪華。