貞子DX (2022):映画短評
貞子DX (2022)ライター4人の平均評価: 3.3
コメディ路線に舵を切ったシリーズ最新作
これまでの設定を仕切り直した『リング』シリーズ最新作。呪いのビデオを見た人間が24時間以内に死ぬという事件が相次ぐ中、オカルト否定論者の女性大学院生が20年以上前の類似事件に着目するものの、ふとしたことからビデオがSNSで拡散されてしまう。恐怖よりも笑いに舵を切ったホラー・コメディ路線は間違いなく賛否あると思うし、それゆえにスリルもサスペンスもないのだが、しかし「呪い」を「ウィルス感染」と解釈することでコロナ禍の混乱を風刺したアイディアは面白いと思うし、あらゆる現象を論理的かつ科学的に解明しようとする頑固でKYなヒロインをはじめとするクセ強めなキャラも魅力。過去作とは別物として楽しみたい。
ゼロ貞子からウィズ貞子へ!?
『貞子3D』あたりからコミカルな味付けがなされ、純正しホラーから遠ざかりつつあった貞子が、ついにここまで……という、ユニークな到達点。
“呪いなんてない。すべては科学的に説明できる”という天才女子大学院生の視点に、貞子という悪霊の存在をぶつける妙。そのドタバタにユーモアが宿り、惨死描写にもブラックな味わいが出る。
注目すべきは、呪いという恐怖の対象がパンデミックを模していること。目には見えないがジワジワと広がり、状況が恐ろしくなっていく、そんな設定が面白い。シリーズ過去作の、貞子撃退のドラマとは異なる展開に注目!
コメディに振り切った潔さをどう捉えるか?
「リング」シリーズの世界観に、「ガリレオ」もしくは「東大王」要素をブチ込んだ、ある意味『貞子vs伽椰子』にも近い異種格闘技戦。『イット・フォローズ』を意識しながらも、木村ひさし監督がコメディに振り切ったのは、ある意味潔く、英勉監督を起用した意味がなかった『貞子3D』シリーズほど事故っていないのは事実。ツッコミキャラが冴える小芝風花と、鬼邪高の楓士雄と同一人物にみえないナルシルトキャラの川村壱馬の掛け合いも、なかなか興味深い。とはいえ、80年代のギャグは滑りまくるわ、貞子に対するリスペクトは感じないわと、いかにも『屍人荘の殺人』の木村監督らしい要注意案件でもある。
貞子の汎用性
前作が生みの親とも言うべき中田秀夫監督の『貞子』という正統派な作品だったこともあってか、今回は一転、変化球的な作品になりました。
どのような形でも物語になるのは”貞子”というキャラクターブランドの汎用性の高さ故でしょう。
DX=デジタルトランスフォーメーションという言葉通り今回はまた一味違った”貞子とリング”になっています。最初の『リング』から四半世紀近くが過ぎ、こういうのもたまにはいいですね。木村ひさし監督が選ばれたというのも長い歴史があってこその事でしょう、監督らしいキャラの立った登場人物も見ていて楽しかったです。