ソウX (2024):映画短評
ソウX (2024)ライター4人の平均評価: 3.3
最大の驚きは、発想の逆転にあり!
シリーズ10作目にして初めて、殺人鬼ジグソウの視点で描かれるドラマという点に、ファンとしては注目すべきだろう。
これまでデスゲームの仕掛け人として暗躍していたジグソウを主人公に据えたのは、その人間像や哲学に深く迫るということでもあり、そこに共感を生じさせるドラマが生じる。一方、過去のシリーズでは主人公だった、ゲームを仕かけられる側が成敗される立場に。勧善懲悪ならぬ“勧悪懲悪”と言うべきか。
ジグソウの動機がはっきりしている分、観客も彼を応援したくなる奇抜な構造。『ソウ』全作に関わってきたグルタート監督でなければ、この発想の転換は生まれえなかっただろう。シリーズ随一の高評価も納得。
殺人鬼ジグソウが怒れるダークヒーローとして復活
連続殺人鬼ジグソウことジョン・クレイマーが本格復活するシリーズ第10弾は、1作目と2作目の間を埋めるインタークエル。末期癌で余命幾ばくもないクレイマーが、藁にもすがる思いで超高額な「奇跡の最先端治療」を受けたところ、これが真っ赤な嘘だった。ということで、不届き者の詐欺集団を拉致して死のゲーム開始!今回はジグソウをダークヒーローに仕立てた痛快ピカレスクロマンだ。ラストの危機一髪を含めて展開は予想通りだが、しかし裏金議員をはじめ悪党ばかりがのさばる昨今、騙した相手が自分たちの手に負えない怪物だったと悟った詐欺師たちの絶望の表情と悲惨な末路には、ある種のカタルシスを禁じ得ないだろう。
まさかのジグソウ応援モードに突入!
シリーズの要ながら、どこか愛すべきドジっ子でもあったジグソウことジョン・クレイマーの素顔に迫った、いわば『ソウ 1.5』。「ジグソウによる大掛かりな殺人ゲームの源には、大掛かりな詐欺師集団との一戦があった!」と言わんばかりの激アツドラマからの、プレイヤー側に回ってしまったジグソウへの応援モードに突入! 原点回帰と立場逆転を軸にしたことで、『エスター ファースト・キル』にも近いテイストといえるだろう。そして、半ば強引なビリー人形の登場や助手アマンダとの掛け合いなど、グロ描写に走りすぎた続編の多くや前作『オールリセット』の反省を踏まえてのファンサービス映画に仕上がっている。
『ソウ』と『ソウ2』の間、ジグソウの新たな顔が見える
第1作『ソウ』と『ソウ2』の間の出来事を描き、『ソウ2』を補完する。奇妙な形態の拷問器具、自分の体の一部を犠牲にしないと抜け出せない仕掛け、ビリー人形、ヒネリのあるストーリー、と『ソウ』シリーズの必須条件がすべて満たされている。
それもそのはず、監督も脚本もシリーズの常連。監督は第1作から編集を担当、『ソウ6』『ソウ ザ・ファイナル 3D』を監督したケヴィン・グルタード。脚本コンビは近年の『ジグソウ:ソウ・レガシー』『スパイラル:ソウ オールリセット』からの続投。『ソウ』の条件を満たしつつ、ジグソウが強敵に立ち向かうという新機軸に挑戦。人間ジグソウの新たな側面を垣間見せてくれる。