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ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた (2022):映画短評

ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた (2022)

2025年1月31日公開 111分

ドリーミン・ワイルド 名もなき家族のうた
(C) 2022 Fruitland, LLC. All rights reserved.

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 3.3

猿渡 由紀

特別の人ではなく、多くの人についての物語

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

 静かで、物悲しくて、奥深い。“実在のミュージシャンについての映画“という言葉から想像するのとはまるで違う、選ばれた人ではなく、ごく普通の、この世の中にたくさんいる人たちの物語。才能を褒められ、家族にも応援され、夢と希望にあふれていた若い頃。もう忘れていたその頃が、突然目の前に現れたら。周囲は素直に喜んでくれても、その頃の歌を歌っていた自分と今の自分は違う。
 表向きにはあまり大きなことが起きないストーリーを引っ張るのは、ケイシー・アフレック演じる主人公の内面の葛藤。せりふで説明しすぎることなく、正直かつ繊細に描かれる家族の関係もリアルで共感できる。小さいけれども、胸を打つパワフルな作品。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

”あの頃”との再会が、痛みと気づきを運んでくる

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 実話に基づき、10代の頃に発売したアルバムが約30年後に評価されたミュージシャンを描くが、それが単純にラッキーな物語にはならないところが本作の魅力。それは主人公に敗れた夢に再び向き合う痛みをもたらすが、その一方で目を背けていたことを直視する契機にもなる。彼の若き日々を描く映像が眩しく美しく、現在との対比も胸を打つ。

 監督・脚本は『ラブ&マーシー 終わらないメロディー』でザ・ビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンを描いたビル・ポーラッド。ケイシー・アフレック扮する主人公の若き日を演じる、『ハニーボーイ』のノア・ジュプが初々しい。ボー・ブリッジスが演じる心から息子を信じる父親像が暖かい。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

観た人の多くが「あの頃の自分」と対話したくなる仕様

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

若い時代に得た栄光。一瞬だけの煌めきの記憶が、年齢を重ねた後に甦る。その喜び、もどかしさ、後悔、新たに生まれる葛藤で、ケイシー・アフレックの個性が最適だと本作は証明する。若き自分との対話など、ケイシーの“よるべなき頼りなさ”が超絶マッチ。
一方で10代の天才俳優ノア・ジュプは、学校内のライブで発揮する美声で魅了。もっと彼の歌のシーンをいっぱい観たかった。
息子たちの夢を後押しする両親の思いが優しく、かつ痛いほど伝わるドラマだが、最も切ないのは兄弟デュオの兄の立場。才能に恵まれた家族に対する彼の心情こそ、本作を観る人の多くが共振するのでは? 各人物の本音をあえてセリフで示さない脚本が奥ゆかしい。

この短評にはネタバレを含んでいます
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