脳内ポイズンベリー (2015):映画短評
脳内ポイズンベリー (2015)ライター4人の平均評価: 4
真の主役は「越智さん」ですよ!
ってくらい、成河扮する「いい人」キャラの編集者に力が入ってる!(笑)
お話の主軸は、自己評価がやたら低い女性のこじれた自意識――なわけだが、筆者が感嘆したのは、彼女の不器用な態度が、周囲の人間を無自覚に傷つけてしまうコミュニケーションの実害まで描き切っていること。それは早乙女(古川雄輝)のガキな身勝手さとパラレルで、男の描写もかゆい所まで手が届いてるんだよなあ。
脳内会議は某ディズニーアニメに偶然先駆ける形になったが、本作は恋愛や人間関係に悩んでいる大人にとってのかなり具体的な処方箋だ。
『第三の男』のアリダ・ヴァリばりの「振り返らない真木よう子」に拍手! 観るの遅くなってごめんなさい!
マルコヴィッチの……ではなく、真木よう子の穴
ヒロインの心の葛藤を擬人化し、コミカルに可視化した脳内エンタテインメント。頭の中で繰り広げられる脳内会議、自意識との対話を戯画的に綴る手法は、初期のウディ・アレン作品を少し感じさせ、ここまで空回りするコミックキャラを演じた真木よう子もとても新鮮だ。
どのパートも達者な役者を揃えているが、とりわけ誠実さの裏に静かなパッションを隠し持っている年上の編集者を演じた成河が素晴らしい。脳内会議のシーンがややクドいが、主戦場のTVドラマで『WATER BOYS』(1が傑作だった)から『ストロベリーナイト』まで多彩に、しかも映画でも確かなアベレージを残す佐藤祐市監督の手腕はもっと讃えられていいと思う。
『インサイド・ヘッド』への強烈な先制打!?
ビジュアルのイメージ的にゲロ甘のラブストーリーと思ったら、これが意外にアップテンポで面白く、なおかつよくできている。
脳内と脳外のそれぞれのドタバタが入り交じって構築される、ユーモラスなエンタメ・ワールド。一方で、脳内と脳外の世界がしっかり噛み合い、2つの世界のリンクが巧くリンクしていていろいろ考えながら見た。
真木よう子のキュートなコメディエンヌぶりや古川雄輝の能面のようなクールさも活きているし、脳内会議の役者たちの芸達者ぶりも目を引くに十分。どちらの世界のキャラクターも顔がアップになる度にドキッとし、気持ちがそちらに向いてしまう。絵的にも巧い。
『キサラギ』監督だから見事に再現できた“脳内会議”
『インサイド・ヘッド』に先駆けて公開される“脳内モノ”だが、原作者がドラマでの松潤のエロ脳内にクギ付けだった「失恋ショコラティエ」と同じこともあり、真木よう子演じるヒロインの胸元…いや、脳内がとんでもないことになる! 事あるごとに開かれる“脳内会議”だが、『キサラギ』の佐藤祐市監督を起用した製作陣の読みは正解で、擬人化された5つの思考がぶつかり合う密室劇としての見ごたえは十分。理性担当の西島秀俊のコミカル演技だけでなく、ポジティブ担当の神木隆之介とは対照的なネガティヴ担当の吉田羊が、ここでも舞台女優としての本領発揮。後半にかけての失速感は否めないが、この二重構造の展開はクセになる。