焼肉ドラゴン (2018):映画短評
焼肉ドラゴン (2018)ライター2人の平均評価: 4
今見るべき、必死に「生きる」者たちの物語
素直に、良い映画を見た、と言える。舞台を観ていない身としては、このような作品の映画化は有難い。
生きていくことに余裕を持っている者はひとりもおらず、どのキャラクターも恋や人生、未来と格闘している。それゆえに時には悲劇的な事も起こるが、物語はユーモアを忘れず、過剰な演出を避ける。ただただ人間が必死に生きている、そんな風景が、見ていて自然と自分の中にしみこんでくる。
人種、貧困、身体的ハンデなど、差別や偏見の的にされてもおかしくないキャラクターたちが、あくまで人対人として向き合っているのがいい。ヘイトの問題が何かと取りざたされる今、この映画の存在は大きな意味を持つと思う。
『三丁目の夕日』のアンチテーゼとして観るのも一興
まだまだ続く大泉洋バブルだが、そこまで感情移入できるキャラでなくとも、今回も長回しで捉えた“ご返杯”など、美味しい見せ場を持っていく。ドスを利かせる『パッチギ!』の真木よう子、「キッズ・ウォー」の井上真央を堪能できる懐かしさもあるが、両親役を演じる韓国人キャストの圧倒的な存在感にはかなわない。史実に基き、在日家族を描くと同時に、セリフなどでオチで付ける戯曲原作ならではの暗転感もなかなかで、『ALWAYS 三丁目の夕日』のアンチテーゼとして観るのも一興だ。だが、狂言回しである長男と三姉妹の関係性が描き切れてない部分もあり、後半の展開に至っては、涙の押し売り状態になってしまったのは否定できない。