ハチとパルマの物語 (2021):映画短評
ハチとパルマの物語 (2021)ライター2人の平均評価: 3
ほぼパルマの物語
タイトルにハチの名はあるが、ほぼ旧ソ連時代に実在した忠犬の話。現地タイトルも「パルマ」で、上映時間も中身も日本と若干異なるらしい。実際、惹句にある”意外なきっかけで結ばれるハチとパルマの絆”を期待すると描き込みが足りなく、取って付けた感は否めない。ただパルマの演技と当時を再現した美術や衣装は素晴らしく、現地でヒットしたのも頷ける。とりわけファミリー映画を謳いながら、美談に隠された”大人の事情”もさらりと描いてしまうあたりは日本も見習いたいところ。そこには”旧ソ連時代の話”を装いながら、常に政治や時代に翻弄され続けている人たちの批判が込められているように思え、本筋以上の感動すら覚えるのだ。
ソ連でも愛される忠犬の美しくもちょっと悲しい物語
母親を亡くした少年コーリャと訳あって空港に置き去りにされたシェパードの友情を描いた忠犬ハチ公のソ連版であり、全体的には微笑ましい。孤独な魂で共鳴した坊やと犬の友情によって周囲の人々が優しい気持ちになり、コーリャとその母を捨てた野心家のパイロットが父子の絆を培う流れもわかりやすい。しかし、感動的な本筋よりも「おおっ」と思ったのがソ連の政治に翻弄される庶民の悲哀。思いやりとか人情など関係なく、上意下達が絶対の官僚主義国家って怖すぎる。ま、だからこそ少年と忠犬のうつしき友情がより一層際立つけどね。