ポケットの中の握り拳 (1965):映画短評
ポケットの中の握り拳 (1965)器用に生きられない若者の怒りと狂気
イタリア映画界が誇る永遠の反逆児マルコ・ベロッキオの幻の処女作。物語は今で言うニートの青年による家族殺しだ。名門とはいえ実際のところ優等生の長男に養われている鬱屈した家庭で、漠然とした不満や怒りを抱える内向的な次男の狂気が静かに醸造されていく。
それはあたかも、旧世代の生んだ社会の歪みや一部のエリートしか幸福になれない現実に対する、’60年代当時の若者たちの憤怒を代弁するかのようだ。
少年のあどけなさを残した主演俳優ルー・カステル(「カサンドラ・クロス」のテロリスト)の複雑な悲しみを湛えた演技も痛々しい。希望の見いだせない若者が増えた今だからこそ、改めて見直す価値のある作品かもしれない。
この短評にはネタバレを含んでいます