ザ・ホスト 美しき侵略者 (2013):映画短評
ザ・ホスト 美しき侵略者 (2013)ライター2人の平均評価: 2
すっかり馬脚を露わしちゃいました。
SF好きなのは判るが、虚構を前提とした上でのリアルなディテイルを積み上げられず、なんとなく雰囲気だけ近未来で、なんとなく現実社会の暗喩を忍ばせた形而下的世界観しか示せぬA.ニコル。そういう意味で本作は彼らしい映画だといえる。星々の生命体に寄生し征服してきたくせに実は平和主義者という、理解不能な宇宙生命体のスタンス。残留した宿主の意識と会話し続けるS.ローナンの二人羽織コントのような間抜けさ。「宿主の人格」と「寄生された人格」のそれぞれに恋する別の男が現れ、ひとつの身体をめぐって鞘当てするというアホらしさ。中盤のキス・バトル(?)なんぞ昨今のディズニー映画以上の「真実の愛のキス」に対する愚弄だ。
寄生型エイリアンと人類の異文化交流ドラマ
人間の体を乗っ取る地球外生命体に支配された近未来を舞台に、とある少女に寄生したエイリアンが地球人レジスタンスに囚われ、やがて人類への理解を深める。
異星人の目を通して人間のなんたるかを説く、というのはSFの王道的な手法だが、少女の意識が消されず脳内に残り、自分を乗っ取った侵略者と友情で結ばれていくという設定はユニーク。哲学的なSFを好む向きには興味深い部分もあるだろう。
ただ、穏やかで平和的なエイリアンがなぜ侵略行為を?という根本的な矛盾に明確な説明がなく、他にもアクションやVFXの挿入を意図したご都合主義的なお膳立てが目立つ。人類との交流ドラマが丁寧に描けているだけに惜しまれる。