ジゴロ・イン・ニューヨーク (2013):映画短評
ジゴロ・イン・ニューヨーク (2013)ライター3人の平均評価: 3.7
W・アレン映画からの影響も濃厚な変化球的フェミ映画
中年の冴えないオジさんがジゴロとして並み居る美女たちのハートをメロメロにする。そんなバカな!と思われるかもしれないが、実際のところホストクラブの指名No.1が必ずしもイケメンとは限らないのだから、意外と的を得ているのかもしれない。
ひたすら女性の声に耳を傾け、彼女たちの個性や生き方を理解し、対価以上の愛情を注ぐ主人公。いまだ社会から様々な束縛を課された女性の不満と願望を満たしてくれる存在だとも言えよう。
そんな彼の元締めとして一攫千金を目論む老人を、ウディ・アレンが飄々と演じて笑いを誘う。N.Y.にジャズなどのキーワードを含め、アレン作品からの影響も濃厚な変化球的フェミニズム映画だ。
「俳優ウディ・アレン(78歳)」をリラックスして楽しみたい
「毎度おなじみのウディ・アレン」が久々に炸裂! ジョン・タトゥーロに「病院へ行け!」とつっこまれ、「週二回通ってる」とボケ返す。監督作『ブルージャスミン』は傑作だったけど、『結婚記念日』『ヴァージン・ハンド』に連なるアレンが出演のみに徹した本作は、正直ユルい出来だが肩の力を抜いて楽しめるのが嬉しい。
ブルックリン、本屋、ジャズ、女たちなど、監督タトゥーロも「アレン節」を意識。女性群像としては四十路になったヴァネッサ・パラディも味わい深いが、「高校時代はバージンよ」とのたまう女医役シャロン・ストーンがやはり最高。彼女も出演したジャームッシュの『ブロークン・フラワーズ』に通じるノリがあるかも。
タトゥーロの哀切とアレンの軽妙さが生きる大人のラブコメ
監督のジョン・タトゥーロがジゴロ役ってジョーク?と思ったけれど、意外にも渋くてセクシーなのにびっくり。しかも彼が演じるフィオラヴァンテは敬愛する女性の心情を深く理解する設定だから、商売繁盛も納得だ。彼が心を寄り添わせる客はリッチで自由奔放な美人女医と正統派ユダヤ教徒の未亡人と対照的だが、心の奥に抱えている空しさや寂しさは共通している。人はやはり誰かとつながりたい生き物なのだとしみじみ。というタトゥーロ的な哀切に笑いをまぶすのがウディ・アレン演じるポン引きの場面だ。相変わらずおしゃべりで軽妙で、抜群のタイミングで場面をさらう。この2人のテイストを併せたラブコメは大人にしか味わえないかも。