フライト・ゲーム (2014):映画短評
フライト・ゲーム (2014)ライター3人の平均評価: 4
気になる監督がキチッと期待に応えた高濃度サスペンス
『蝋人形の館』で気になる俊英として意識させ、『エスター』でサスペンスの新たな天才出現か!?……と思わせたジャウマ・コレット=セラ監督。今回も期待は高かったが、十分すぎるほどそれに応えてくれた。
旅客機内という限定空間での謎のテロ犯との静かな攻防は緊迫感満点だし、随所に張られた伏線も効果的。アクションが一気に加速するクライマックスは意外性十分で、退屈とは無縁のサービス精神に唸った。
監督の前作『アンノウン』に続いて主演を務めたリーアム・ニーソンは今回もダークヒーロー的な危うさをうまく表現し、ドラマに揺さぶりをかける。主人公でさえ簡単に信用できないのだから、スリルの濃度の高さは格別だ。
密室サスペンスのかなり理想的な構成。
過去のトラウマでアル中になった航空保安官、謎の犯人に命運を握られるフライト中の飛行機…となると、いくつかの類似作を即座に思い浮かべるのだけれど、じりじりとL.ニーソンを追い詰めていくねちっこい展開、先行きの読めない推理要素の強さ、犯人との接触手段となる凝ったメール文字(K.クーパー率いるプロローグ・フィルムズがデザイン)…と目を逸らさせぬ仕掛けは半端ない。ひょっとして犯人?と思わせつつロマンスの匂いを漂わすJ.ムーアとの関係も、お約束的だが必要不可欠。搭乗者全員疑心暗鬼の中、怪しい乗客を次々と誰何していくニーソンを移動で追う6分間のロングショットは息詰まる迫力。コレット=セラ、やるじゃん。
ありがちな設定を手堅くまとめた航空サスペンス
国際線旅客機の閉ざされた空間を舞台に、ベテラン航空保安官と正体不明のハイジャック犯の緊迫した戦いを描く航空サスペンス。
ある理由で精神的に問題アリな主人公の乗るフライトを、犯人があえて狙ったという点がミソ。なので、こちらの手管も弱みも敵は全てお見通し。乗客役もジュリアン・ムーア以外は、名前は知らずとも顔はピンとくる映画やテレビの中堅どころを揃えているので、誰が犯人でも不思議はない。お膳立てはバッチリだ。
クライマックスの危機一髪はちょっと出来過ぎだし、明かされる犯行動機も拍子抜けだが、二転三転するスピーディな展開は好調。ありがちな設定を手堅くまとめた良質なB級エンターテインメントだ。