MUD マッド (2012):映画短評
MUD マッド (2012)ライター2人の平均評価: 4
マコノヒーはもちろん、ジュヴナイルの完成度にも注目
恋愛の機微を学ぶ少年を描いた、端正なドラマとして唸らされた。彼が出会った流れ者は来ないかもしれない女性を待ち、一方で少年の両親は夫婦仲が冷え切りつつある。大人の愛の現実がそこに見えてくる。
少年が人生を学ぶという点でも歯応えアリ。流れ者は自由を体現し、父親は常識を説く。どちらも生きてゆくうえで必要なもの。そういう意味では悪役になりかねない厳格な父親を、理解できる人物として描いたバランスの良さが光る。
注目のマシュー・マコノヒーは文句なしの好演で、『ダラス・バイヤーズ クラブ』でのオスカー受賞の追い風となりそうだ。何より、成長劇の“パーツ”としてきちんと機能している点が素晴らしい。
絶品! 負け犬マコノヒーのカントリーブルース的抒情
賞レースを賑わせ中の『ダラス・バイヤーズクラブ』(2月22日公開)は、マシュー・マコノヒーがここ数年のアウトロー怪優路線を昇華した記念碑的な一本。その前にぜひ観ておきたい彼の出演作が、この『MUD』だ。ワケありの逃亡者ながら徐々に「イイやつ」の顔を見せる、負け犬ハンサムの色気が絶品の味わい。
そんな彼に、ある種「自由」の匂いを嗅ぐミシシッピ州を舞台にした少年の冒険譚――という点でマーク・トウェインの世界、あるいは『スタンド・バイ・ミー』と比較する評が多いが、マコノヒーに焦点を合わせるとニューシネマの残響が強く前面化する。俊英ジェフ・ニコルズ監督が「南部もの」の正統を高感度に継承した秀作だ。