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さようなら (2015):映画短評

さようなら (2015)

2015年11月21日公開 112分

さようなら
(C) 2015 「さようなら」製作委員会

ライター2人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.5

相馬 学

静かな終焉の中に宿る圧倒的な美

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 滅亡の美学という言葉が頭をよぎる。人は去り、街も森も生気を失って風に揺れている。寂寞とした風景が、圧倒的に美しい。

 ヒロインもこの風景の中に同化したかのよう。感情の高ぶりも失われ、寂しさは静かに噛み殺される。訪ねてくる人は日に日に減り、世話用のアンドロイドだけが側にいる現実。そしてヒロインは植物のように枯れていく。アンドロイドのバッテリーに関する設定の甘さは気になったが、それを差し置いても詩的な世界は十分に魅力的だ。

 原発、差別、そして日本人の精神。映画の中には、さまざまな思考の要素が含まれているが、それらを押し付けることはない。まずは、この終焉に圧倒されたし。思考は、その後だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

気が遠くなるほどの哀切の美が滲み出す

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

『ざくろ屋敷』の“画ニメ”が、今作のクライマックスとなる長い時間の推移を映し出したワンカットと重なる。それが「円環」に思えた為、『さようなら』は深田晃司監督の最初の集大成に見えた。グローバル化(難民)や3.11の影は『歓待』や『ほとりの朔子』でも提示された主題だ。

原作は青年団の戯曲。元々アンドロイド演劇は、人間をロボットのように厳密に芝居させる事でリアルを生成する逆説から誕生したはずだが、深田は映画への移植でトライアルを広げる。ポイントはやはり「時間」。アンドロイドは腐敗していく人間を対象化し、世界の永遠性は人間の知に過ぎないアンドロイドを対象化する。現代から普遍にタッチする傑作寓話だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
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