浮城 (2012):映画短評
浮城 (2012)イム・ホー、相変わらずの骨太さ。
内なる激情を秘めつつ、ほぼ笑顔なしに演じ切るアーロン・クォックが素晴らしい。無学な中英の混血児が出世街道を登りつめるまでの約40年間を描く、やや立志伝風のつくりだが内実は苦い。中国(水上生活者「蛋民」)とイギリス(東インド会社)の間で引き裂かれた彼のアイデンティティは常に音を立てて軋んでいて、つまりアーロンは戦後香港そのものの表れなのだ。’80年代香港ニュー・ウェイヴの立役者イム・ホーの健在ぶりを示すだけでなく、こんな骨太な題材なのにスタイリスティックな林國華の撮影も驚き。ちなみにアーロンとチャーリー・ヤンが夫婦役というのは、かつての同志パトリック・タムの『父子』(超傑作!)を連想させるな。
この短評にはネタバレを含んでいます