グローリー/明日への行進 (2014):映画短評
グローリー/明日への行進 (2014)ライター2人の平均評価: 4
あまり偉人に祭り上げないキング牧師像。
セルマでのキング牧師とその妻、支持者・非支持者たちの行動を、FBIの監視報告の形を借りて克明に追う。やはり面白いのは人間的なキングの姿。敵地に乗りこむ前夜、不安に駆られてマヘリア・ジャクソンに電話で歌ってもらったり、反目するマルコムXに単身共闘を請いに行った妻に怒り嫉妬して暴言を吐いたり、不在中に「血の日曜日事件」が起こるが安全優先ですぐに戻らなかったり、全国から集った支援者とともにペタス橋を渡るが武装警官隊を観て後戻りしちゃったり。いや、こうした慎重な態度こそが改革を着実に進めるということではあるし、斜から見ると臆病もまた戦略の助けになるという今なお有効な政治闘争マニュアルでもあるのだ。
差別と戦ったのはキング牧師だけでないと体感
公民権運動を率いたキング牧師は誰でも知っているが、本作は彼とともに戦った人々に焦点を当てたのが素晴らしい。アフリカ系の人々が通う教会が何者かに爆破される場面や彼らに不利な選挙人登録の場面で強烈な印象を与え、キング牧師たちの行動につなげる展開が実にスムーズだ。南部のアメリカ人の未成熟さや差別主義に対し、アフリカ系の人々の高潔さを際立たせるあたりは演出過剰だが見る者の心をがっちりつかむ。逆に大統領と側近はじめとする政治家の右往左往ぶりは滑稽で、これも監督の狙いだろう。記録映像も交えたデモ行進のはまさに正義は勝つという感じだが、理想の実現までの道のりはまだまだ遠いと思うとやるせない。