私の男 (2013):映画短評
私の男 (2013)ライター2人の平均評価: 3
それは愛なのか、それとも情欲なのか ※若干のネタバレあり?
そもそも近親相姦という関係が、少なくとも映画や文学の世界においては、ことさら衝撃的な題材だとも思わない。しかし、どうにも拭えない嫌悪感というか、全く感情移入のできない何かが本作の主人公たちにはある。
2人だけの閉ざされた世界を守るため、罪を重ねて堕ちていく父・淳悟と娘・花。しかし、彼らを突き動かしているものは“愛”などではなく、ただお互いの心にポッカリと空いた穴を埋めるためだけの情欲にしか感じられない。解釈の分かれるところだとは思うのだが。
結果的に周囲を手玉に取る女の、感覚的な薄気味悪さを生々しく演じる二階堂ふみは凄い。客観的に力作だとは思うのだが、個人的には最後まで乗り切れなかった。
何が凄いって浅野くんの胸毛だったりして。
いくつかの“事件”が起こりはするものの、メインはずばり浅野忠信と二階堂ふみの閉じられた世界。時制を遡るかたちで綴っていく原作を解体し、順当な時系列で物語ることで、浅野の運命を結果的に操っていく二階堂の小悪魔ぶりがより鮮明になっている。昨年の傑作『夏の終り』に続く“文芸性愛路線”といっていいと思うが、今回はより濃厚。二人が交合う部屋に血の雨が降るとか、いささかアングラ趣味のやり過ぎ感はあるものの、互いの身体に染みついたセックスの残滓を確認しあうような“指しゃぶり”と“匂い”への執着はすさまじく、見てはいけないものを観ている気にさせるに充分だ。高良健吾なんて単なるコメディ・リリーフだもんな。