エージェント:ライアン (2013):映画短評
エージェント:ライアン (2013)ライター3人の平均評価: 3
堅実だが、スパイ活劇の進化のなかではどうか!?
ファンには嬉しい“ジャック・ライアン”シリーズの復活。しかももっとも若い時期、CIAキャリア初期のライアンを、現代を舞台にして描くのだから興味を惹かれる。
恋人を巻き込みエージェントとして初の任務に挑むライアンの奔走は危なっかしいが、そこがむしろスリリング。とりわけ、彼らと悪党のディナーと、その後の流れは緊張感満点でハラハラさせられた。
一方で、シリーズ前作までに比べてスケールの大きさが失われた気もする。現代性を踏まえたネット上のテロもスリルを増大させるに至らず、合格点だがファンとしては歯がゆさも。“ジェイソン・ボーン”以降のスパイ活劇の進化の中では、どうにも地味に見えてしまう。
エンタメ性は高いが、重厚さに欠ける
若年層ターゲットに“ヤングジャック・ライアン”を狙ったら、悪い意味でジェームズ・ボンドとジェイソン・ボーンの中間キャラになった。しかも、浮気を心配する妻に正体をバラすライアンの口のように、意外と軽い作りに…。ツッコミどころも多く、これまでのシリーズの売りだった重厚さを期待すると裏切られる。
とはいえ、展開はスピーディで、ド派手な爆破シーンもアリと、エンタメ性は高い。ただ世界を股に掛けながら、どこかスケール観に欠けていたりも。悪役としてはそれなりの存在感を残したケネス・ブラナーだが、監督としては課題を残した。
トム・クランシーの原作とは全くの別物と考えて楽しむべし
過去のジャック・ライアン・シリーズとは明らかに袂を分かったリブート版。物語的にはジャック・ライアン伝説第一章といったところだが、分析官らしからぬスーパー・エージェントぶりはかえってジェームズ・ボンドに近い。
舞台設定も現代へとアップデート。脚本は完全オリジナルだが、ロシアを悪の枢軸国へ見事(?)に復帰させ、世界の平和と安全を守る正義の国アメリカを際立たせる辺り、まるで冷戦時代の再来だ。
ご都合主義丸出しのストーリー展開に不満は残るものの、派手なカーチェイスやスタントアクション満載のサービス精神は旺盛。とりあえずクランシーの原作とは全くの別物と考えれば、普通に楽しめる娯楽大作と言えよう。