台湾アイデンティティー (2013):映画短評
台湾アイデンティティー (2013)日本人の知らない台湾の戦後史を浮き彫りに
第二次世界大戦の敗戦による日本の撤退を経て、中国本土から来た蒋介石の国民党政権による言論統制と政治弾圧という苦難の歴史を歩んだ戦後の台湾。その生き証人とも言える6人の老人たちの人生を振り返ることで、我々日本人の知らない台湾の戦後史を浮き彫りにするドキュメンタリーだ。彼らの口から語られるのは、古き良き日本統治時代への郷愁と国民党の暴虐に対する今なお消えぬ強い憤り。日本軍の一員として戦うのが誇りだった、日本人の名を汚すようなことは一切しなかった。もちろん、そうした彼らの言葉が当時の台湾人全ての声を代弁するものではないだろう。だがその一つ一つに、歴史書では記録されない市井の人々の戦中戦後が刻まれていることもまた確か。東アジア近代史の複雑さを改めて思い知らされる。
この短評にはネタバレを含んでいます