エンダーのゲーム (2013):映画短評
エンダーのゲーム (2013)ライター3人の平均評価: 3.3
冒険心と社会性、冷静と情熱の間を漂う秀作SFドラマ
子どもを主人公にした話だが、それでも共感を抱けたのは、単にガンダムやエヴァのノスタルジーが疼いたからだけではない。
もちろん冒険心を刺激する点は重要なポイント。宇宙に飛び立つことにロマンを覚えるのは、筆者だけではないだろう。球形の無重力ドーム内で行なわれる実践訓練も迫力があり、ワクワクさせるに十分だ。
そんなエンタメ要素の一方で、現代的な点に深く考えさせられた。戦闘訓練こそフィジカルだが、戦争そのものはバーチャル感覚。端末の操作ひとつで敵を殲滅することができる状況には戦慄を禁じ得ない。30年以上も前に原作は執筆されているが、このゲーム感覚は今でこそ理解しやすい。なかなか歯ごたえアリ!
ビジュアルは申し分ないが、物語はダイジェスト的印象も否めず
異星人の侵略から地球を守る、という重すぎる使命を背負わされてしまった少年の苦難と成長の物語。
選ばれし者としての誇り、自分を見下す連中の鼻を明かしたいという願望、できれば他者を殺めたくないという本音。こうした主人公エンダーの複雑な葛藤を通し、大人の勝手で若者が戦場へ送られる理不尽や戦争そのものの愚かしさを描く。メッセージは極めて明確だ。ビジュアルの美しさやスケールも申し分ない。
ただ、全体として駆け足で語られるため、ダイジェスト的な軽い印象は否めない。特に最大の見せ場であるクライマックスは、原作未読ではあるものの、恐らく映像で見るよりも文章で読んだ方が衝撃度は大きいだろうと想像がつく。
妥協なき“ドSF”に備えよ!
「エヴァンゲリオン」などの元ネタとして知られるSF小説を114分でまとめているので、サッパリ感は否めないが、完全復活を遂げたギャヴィン・フッド監督の硬派演出から、十分に“ドSFな世界観”は伝わる。
ただし、バトルスクールを舞台にした少年少女の成長物語ということで、ライトな青春映画ノリを期待すると痛い目に遭う。ヘビイな初期設定と膨大な情報量、名優たちのムダに力の入った熱演から、冒頭からおいけてぼりを喰らう可能性もあるからだ。そのため、ある程度の情報量を入れておくことを勧めたい。
ちなみに、ネタバレ厳禁な衝撃のラストだが、原作まんまなのでご安心あれ!