相棒 -劇場版III- 巨大密室!特命係 絶海の孤島へ (2014):映画短評
相棒 -劇場版III- 巨大密室!特命係 絶海の孤島へ (2014)ライター2人の平均評価: 2
あくまでアベレージを死守するプロ根性に拍手!
『相棒』の劇場版は、小ぶりなミステリーであるテレビシリーズを拡大させるため、毎回ちょっと背伸びしてポリティカル・サスペンスに仕立てている。そして作劇は、今の日本で大枠の政治性を成立させることの難しさを律儀に押さえているのがポイントだ。
今回はミリタリー・アクション風をめざし、憂国派の暴走を描く。だが「国防という流行病」(右京)の言葉通り、それは空回りするしかない。
ドラマがアイロニカルゆえの煮え切らなさに陥るのは必然で、実は高いハードルを課していると思う。それでも娯楽作として及第点に乗せるプロ根性に敬意を表したい。ただ一点、釈由美子の「ハニートラップ」はもう少し工夫が欲しかったな~(笑)。
一方的な右傾化批判は極めて片手落ち
民間の私設軍が合宿訓練を行う太平洋の孤島で死亡事故が発生。ただの事故ではないと睨んだ杉下右京と甲斐享のコンビが、いつものごとく真相の究明に乗り出す。
社会派刑事モノとして定評のあるシリーズ。今回の劇場版3作目は、ズバリ“日本の右傾化”に対する警鐘だ。だが、この問題は戦前と立場の逆転した東アジア情勢や各国で台頭するナショナリズムを抜きに語ることはできず、一方的な自国批判に終始する本作は極めて片手落ちだ。
愛国者の暴走という筋書きも手垢まみれだし、背景に横たわる権力の陰謀も取ってつけたような印象。しかも問題提起と批判だけしておきながら、あとは放り投げっぱなしというのでは無責任が過ぎる。