寄生獣 (2014):映画短評
寄生獣 (2014)ライター4人の平均評価: 3.5
傑作になるかどうかは完結編次第だが。
もう染谷将太が適役すぎ。岩明均が描く一見ぶっきらぼうな線と、ちょっと間の抜けたユーモアを体現している。この前篇はほぼひたすら彼の物語だが、存在しない右手相手によくぞここまで演りきったと思える見事さ。その右手=ミギーをモーション・キャプチャで演じる阿部サダヲも派手に演り過ぎず好印象。なんせ原作の知名度が尋常じゃないからハードルは高かったろうが、オリジナルを解体しながらも理に叶った展開にまとめた古沢良太らの脚色も納得。グロテスクな描写も手加減なく(東出昌大は『アオハライド』よりいい)、もともとこのジャンルのヒトである山崎貴はやはりこういう作品に特化したほうがいいんじゃない?と思わせるに充分だ。
パクった『T2』にも、しっかり喧嘩売ってます!
後にハリウッドで映画化権が買われたとはいえ、『ターミネーター2』の元ネタでもある原作。『T2』公開から二十年以上経った、このタイミングでの日本での実写化はベストだろう。近年、新作を撮るごとに叩かれている山崎貴監督だが、今回はとにかく誠実に原作と向き合っており、母親に依存していた新一の成長物語としてはもちろん、新一とミギーのバディものとしても楽しめる。そして、なによりグロとユーモアのバランスがよく、本編最後に流れる後編の予告を観るかぎり、間違っても『GANTZ』にならない予感も。本作とテーマ的に類似する山崎監督の目標である漫画版「風の谷のナウシカ」の実写化に一歩近づいたのではないだろうか。
単なるスリラーに終わらない、“親殺し”ドラマの妙
続編がつ作られることを前提とした映画に面白いものは少ないが、本作は続きが楽しみになることを含めて、よくできている。
体内に混入した寄生物が醸し出す生理的なスリルに引き寄せられる一方で、不気味なはずの“ミギー”の茶目っ気あふれるビジュアルも魅力。何より、母親に依存しきっている主人公の成長がクリアに見える点がイイ。寄生された母との対決は、通過儀礼的“親殺し”のドラマとして機能しており、見応えがあった。
脇で出ているどの映画でも印象を残す染谷将太だが、童顔が成長劇にフィットしてハマリ役。寄生されたことがひと目でわかる、どこか人間離れした表情の深津絵里、東出昌大もイイ味を出している。
ミギーがちゃんと不気味でヘンにかわいい
右手に宿った寄生獣ミギーが、どう実写化されるのか。この人気コミックの実写映画化の第1関門はそこだろう。ミギーの、人間とは全く異なる思考と価値観の持ち主だが、宿主の死は自分の死なので、宿主の危機に際しては共闘するという二面性、不気味だが妙に可愛いいという二面性が、リアルすぎない造形と、阿部サダヲの声の演技で、かなりいい感じに実写化されていて、この第1関門はクリアでいいのではないか。第2関門である、寄生獣たちの変形描写も、"するり"と音もなく変貌するタイミング、変形したときの哺乳類の肉にヒトデ系の海洋生物を僅かに加味したような質感で、こちらもまずまずクリア。大テーマをどう描くかは、後編に期待だ。