ありふれた事件 (1992):映画短評
ありふれた事件 (1992)POV×モキュメンタリーの先駆け的作品
強盗殺人鬼の冷酷非道さを表すモノクロ映像に加え、POVやモキュメンタリーというワードが使われてない時代に、何気なくその融合をやってのけていた恐るべきベルギー映画。劇中のセリフや歌、『勝手にしやがれ』から『食人族』までのオマージュ描写、さらに現場で鉢合わせするTVクルーの顛末に至るまで、随所に作り手の映画愛が炸裂。独自の殺しの美学を持つ、饒舌でサイコパスな主人公のカリスマ性に惹かれる撮影クルー同様、観る側も共犯者になっていくような演出のヤバさ。また、対立組織を登場させることで強まるエンタメ展開など、『ハウス・ジャック・ビルト』に足りなかったものが、本作にあるといえる。
この短評にはネタバレを含んでいます