小野寺の弟・小野寺の姉 (2014):映画短評
小野寺の弟・小野寺の姉 (2014)ライター2人の平均評価: 3
もはや “いい話”では納得できないのだ、西田作品なら。
いかにも西田征史らしい、苦さの上に優しさを湛えたコメディだ。なにしろ、似てはいないが他人という気もしない共通する空気を持った向井理&片桐はいりの姉弟キャスティングがいい。ただ何故、弟の失恋をそれほどまでフォローするのか、切実には伝わらないもどかしさがつきまとう話。なんでも舞台で演じられた前日譚があるらしく、素直にそれを映画にすればよかったのではないかという素朴な疑問も残る(ジャンルを超えた創作活動をトータルに…という気持ちも判るが)。しかも山本美月、及川光博を巻き込んだ恋の行方が、これまで脚色ものであの手この手を繰り出して泣かせてくれた西田にすれば、ややクリシェで終わるのも物足りない。
意外にも相性抜群な主演コンビの顔合わせに拍手
向井理と片桐はいりが姉弟だなんて無理ありすぎじゃね?という予想に反し、見れば見るほど“らしさ”を醸し出す2人の相性の良さ、適度に力を抜いた自然な演技が本作の強み。特に向井はキラキラのイケメンキャラより、ちょっと頼りない弟キャラの方が魅力を増す。
基本は昭和の香り漂う庶民派人情喜劇。お互いを思いやるあまり衝突し、不器用ゆえ恋愛にも縁遠い姉弟の日常を、ほろ苦さも交えながら優しく見つめる。ほんの些細な感情のヒダも見逃さない西田監督の丁寧な演出は脚本家出身ならではだろう。
ただ、お話がキレイにまとまりすぎている分だけ、少なからず物足りなさも残る。新人監督らしい無茶があっても良かったかなとは思う。