神聖ローマ、運命の日~オスマン帝国の進撃~ (2012):映画短評
神聖ローマ、運命の日~オスマン帝国の進撃~ (2012)ライター2人の平均評価: 2.5
さほど一方的な描写ではないが…。
第二次ウィーン包囲に興味はなくても、映画好きなら見逃せぬ理由がある。それはあの巨匠イェジー・スコリモフスキがポーランドの武将王役で出演していること! でも…3分の2が経過してやっと登場、さしたる見せ場もないのであまり期待せぬよう。ただハプスブルク家の豪奢な美術(と古楽器楽団)、イスラーム建築内部の幻想的なミステリアスさなど実際の建築物でロケしたとおぼしき場面は見ごたえあり(撮影は近年のベルトルッチ組)。でも外景シーンのほぼすべてにあまり上出来とは言えぬCG処理が加えられていてこれが興醒め。宗教戦争ゆえ「全ての光が真実」か「真実の光は一つしかない」かの議論も深めるべきだが、それも中途半端だ。
歴史の1ページは見る人によって異なるからね
アッラーこそが全能の神と神聖ローマ陥落を狙うオスマン帝国側を最初から悪役として描く恣意的な図式に首をかしげるが、戦いに勝利した<イタリア&ポーランド>が製作だから仕方が無い。物語の軸である第二次ウィーン包囲の400年ほど前には十字軍もあったし、キリスト教vsイスラム教が今なお継続中と考えるとうんざり。しかし本作はシェイクスピア風な人間ドラマがあれば、派手なアクションもあるエンタメ作品。特に心惹かれたのが当時の武器や戦術を忠実に再現した戦闘シーンで、クラシカルな銃やフランスを起源とする騎馬隊防御まきびしなどが登場。人馬入り乱れる戦闘の迫力も見応えありで、アクション快作として楽しんでしまった。