なまいきチョルベンと水夫さん (1964):映画短評
なまいきチョルベンと水夫さん (1964)ライター2人の平均評価: 3.5
ずっとこの世界に浸っていたい
マジで癒される…。A・リンドグレーン原作の映画は『やかまし村』『ロッタちゃん』シリーズも最高だが、1964年製作の本作(当時スウェーデンで国民的ヒット)は原液のような一本だ。サマーハウスの周りには天然素材のパステルカラーがあふれ、ロケ撮影なのにメルヘンティック。まさに王道の北欧テイスト。
そして動物たち。セントバーナード犬、アザラシ…。お話的には事件も起こるが、映画は大らかさを崩さない。現代的なノイズとは無縁の世界だ。
監督のオッレ・ヘルボムはリンドグレーンものを多く手掛けた人だが、ソフトな自然光を活かしたスケッチ調の文体は仏のルノワール~ヌーヴェルヴァーグの流れとの共振性も感じさせる。
自意識ゼロなブ少女の乙女チックが可愛い
この映画、何が素晴らしいかって、主人公がブ少女なこと。主役級の子役だとキュートな少女を想像するけど、チョルベンったらデブで不細工!? そんな彼女がこれまた微妙にブスな親友スティーナと一緒に王子様の出現を夢見てカエルにキスしたり、うさぎLOVEな隣家の美少年ペッレに「私はどう?」としなを作ってみたり。乙女チックすぎというか、自分にないものを求め過ぎというか。とはいえ妙な自意識も無い幼児なのでどの言動も素朴で愛らしく、思わずクスリとさせられる。パンパンに膨らんだまんじゅう顔も愛らしく見えてくるから不思議だけど、リンドグレーンの創造キャラだから当然か。幸福な子供時代を今から体験するのも遅くないはず。