友よ、さらばと言おう (2014):映画短評
友よ、さらばと言おう (2014)ライター3人の平均評価: 3.7
香港ノワール、あんたも好きねぇ
千葉県知事が出てきそうな邦題だが、こちらも「俺も!」「俺も!」と、いい顔した男揃い。デビュー以来、3戦3勝KO勝ちのフレッド・カヴァイエ監督だが、今回も激走するTGVでマフィアと攻防戦という、いかにもハリウッドなクライマックスに、フランス映画ならではの余韻を残しながら、90分ポッキリと見事にまとめ上げる。
前2作に比べ、アッサリ感は否めないが、明らかに香港ノワール・フォロワーでもある監督だけに、『男たちの挽歌』『インファナル・アフェア』のほか、倉庫での戦えば鳩が飛び、オチに繋がるエピソードは『ビースト・ストーカー/証人』(>『クラッシュ』)と、「あんたも好きねぇ」と言いたくなるほどの潔さだ。
フランス映画の伝統とハリウッド的娯楽味の幸福な融合
ヨーロッパコープが幅を利かせるフランスの娯楽映画のフィールドで、フレッド・カヴァイエ監督は過小評価されている気がしてならない。『すべて彼女のために』『この愛のために撃て』に続く本作を見ると、つくづくそう思う。
無駄を省きアップテンポに徹するアクションはもちろん、スリルを持続させる手腕は今回も冴える。闘牛場でのチェイスや、クラブでの銃撃戦などが連なる、スピルバーグの初期娯楽作のような緊迫感に引き寄せられるだろう。
ヌーヴェルヴァーグの精神を受け継いだかのような市街地ロケの躍動感は前2作の路線を踏襲。フィルムノワール的な男気要素も魅力で、フランス製エンタメ映画の底力が見てとれる。
さらば友よ、と煙草は介さぬが。
カヴァイエが現代フレンチ・ノワール界きっての作家なのは間違いなく、しかも長編第三作にして彼のオールスターキャスト。つまり過去二作の主演者が元相棒刑事役でガチ共演するのだ。でも正直、前二作と比べると物語はストレートにすぎてコクに欠ける。実際にリメイクもされたが、もともとカヴァイエ映画はハリウッド的な直截性もあり、それは美点でも欠点でもあるのだけれど、今回はイマイチ観る者の情感を掻き立てぬままに終わってしまうのが惜しい。ただし90分を突っ切るには過不足なく、超特急TGVでのクライマックスは編集術の巧さも冴えて興奮必至。そしてラストで…「私の過ち」「私の償い」を意味する原題が大きな意味を持つのだ。