フランキー&アリス (2010):映画短評
フランキー&アリス (2010)ライター2人の平均評価: 3
事実は小説よりも奇、とは限らないってことかな。
多重人格ものもひととおり出払った感のある今、この程度の話をわざわざ映画にする、というのがちょっと信じがたい。どこまで事実に基づいているのか判らないが、ハリー・ベリーの演技(といっても『チョコレート』ほどの凄味はない)に頼りっきりで、ミステリの体裁を取っている割にはあまりにもヒネリがないのにかえって驚いてしまう。人種差別へのアプローチもさほど心に訴えるようなものではないし……。ただ、ステラン・スカルスガルド扮するちょっとティモシー・リアリー風な経歴を持つ精神科医はそこそこユニーク。物語上ハリーとの対話がメインとなるので、『ニンフォマニアック』の彼を想起させもするしね。
多重人格を瞬時に演じ分けるハル・ベリーが圧巻
多重人格を題材にした実話ドラマだ。主人公は姐御肌の黒人ダンサー、フランキー。何らかの外的影響をきっかけに、気位の高い人種差別主義者の白人女性アリス、常に怯えている心優しい少女“天才”という別人格が頭をもたげる。
それぞれの人格を表情や声色だけで全く別人のように演じ分けるハル・ベリーの演技力は圧巻で、この3者が次々と交互に入れ替わる後半の催眠療法シーンには心底舌を巻く。改めて凄い女優だと唸らされる。
フラッシュバックを多用しながら、病の原因となった過去の悲劇を徐々に明かしていく演出は極めて正攻法だが、時として過剰にメロドラマチックとなるため、物語のリアリズムを損なっているようにも感じる。