不機嫌なママにメルシィ! (2013):映画短評
不機嫌なママにメルシィ! (2013)ライター2人の平均評価: 4
「僕は女だからゲイじゃない!」に終わらぬ屈折。
ゲイ映画なんて珍しくも何でもない昨今、「ひとまわりした」感のある作品としてこれは記憶に残るかも。哀しいほどヘテロな僕からすればゲイ男性が観ればどう思うのか、そちらの友人に訊いてみたくもなるオチはちょっと驚愕だ。監督・主演・脚本のG.ガリエンヌは、舞台上の独り芝居という枠的構造を用いて「自身の物語」を語っていくが、このダイアローグがいわば『アニー・ホール』的アサイド効果をみせて、観客のジェンダー観の混乱をある程度整理してくれる。ガリエンヌの演技はかなり過剰で辟易するところもあるが充分な才気は認めるとして、笑ったのはD.クルーガー。ガリエンヌに腸内洗浄を施す役だが、こんな役、好きだねえ。
素晴らしき哉、女性たち by 乙女系男子
主演俳優ギヨーム・カリエンヌが自身の半生を監督・脚色し、さらには自分と母親の2人を演じ分けるという、まさにワンマンショー的な異色作だ。
知的でエレガントな母親を筆頭に、自由で強くて美しいマダムたちに囲まれて育ったギヨームは、自分を“女の子”だと信じて疑わない乙女系男子。そんな彼が自分をゲイだと受け入れるまでを描いた作品…かと思いきや、最後に驚き(?)のどんでん返しが待っている。
実は曖昧模糊とした人間のセクシュアリティにまつわる自分探しの旅を通して、主人公がたどり着くのは大いなる女性讃歌。80歳を過ぎても最高にゴージャスなフランソワーズ・ファビアンなど、脇を彩る女優陣も魅力的だ。