ザ・ゲスト (2014):映画短評
ザ・ゲスト (2014)ライター4人の平均評価: 4
ジャンルミックスの醍醐味を堪能できる一本
複数のジャンルを巧みにクロスオーバーさせながら、ありがちな設定を全く思いがけない方向へと導いていく。前作「サプライズ」が文字通りのサプライズ・ヒットとなったアダム・ウィンガード監督の最新作は、そんな彼の得意技が再び冴える。
偽りの仮面を被った招かれざる客が、長男を失った家族の心の隙間に付け入り、やがて恐るべき本性を現す。サイコ・ホラーに謀略サスペンス、肉弾アクションと、様々な要素の詰まった展開は一粒で何度も美味しい。
往年のB級映画、中でもスラッシャー映画からの影響は濃厚。「ハロウィン」や「プロム・ナイト」、「ファンハウス」など、元ネタであろう作品を想像しながら楽しむのもまた一興だ。
血糊に頼らず、脚本を信じ切った俊英の新境地
『ビューティフル・ダイ』『サプライズ』と快作を連打するアダム・ウィンガード監督の新作は、やはり期待を裏切らない出来。前2作のスプラッター性はなりを潜めたが、それでも十分にハラハラさせられる。
人当たりの良い主人公が少しずつ凶暴性を発揮。その正体を予測させるミステリーのスリルは尻上がりに上昇し、意外な事実が発覚するクライマックスまで目が離せず、サスペンスととしての完成度の高い。
脚本の作りこみを重視するウィンガードの本質が、派手な映像ではなく物語にあることを確認できる逸品。TV方面で活躍しているダン・スティーブンスのカリスマ的な個性も活きた、高純度のジャンル映画だ。
ジョン・カーペンター的な香り漂うBムービー!
戦死した息子の戦友デイヴィッドを客として迎え入れたら、実はその兵士は戦士していた!? 正体不明な男が一家を自分の新しい家族として守り始めるのは想定内だが、彼をハンサムで礼儀正しい好青年に仕立てて不気味さを際立たせた演出は大正解。チーム・デイヴィッドになるや、危険な空気にぎょぎょぎょ。クライマックスの設定など細部にジョン・カーペンターやブライアン・デパルマの影響が感じられ、アダム・ウィンガード監督のBムービー的センスに期待大。主演のダン・スティーブンスは『ダウントン・アビー』のクロウリー伯爵の印象が強いが、本作で見せるサイコっぽい切れ切れ演技もなかなか。新境地に挑む姿勢に拍手だ。
「ダウントン・アビー」の好青年マシューがこんなことに!
この監督&脚本家コンビには、「サプライズ」「ビューティフル・ダイ」と、2度も予測していなかった展開にヤラレたので、今回もきっと同じような手で来るだろうと身構えながら見たのだが、やっぱりヤラレた。今回は、最初から怪しい人物は明らかなのだが、その行動の一部や、その動機は、予測可能な範疇を超えているんじゃなかろうか。
問題の人物を演じるダン・スティーヴンスは、英国の人気TVシリーズ「ダウントン・アビー~貴族とメイドと相続人~」では、ヒロインに振り回される、おっとりした好青年マシューを演じているのに、今回はムダ肉を絞ってお腹を割って、上半身裸も披露。その激変ぶりに、星ひとつオマケ。