欲動 (2014):映画短評
欲動 (2014)ラストシーンの空には映画の神様が降りている。
身体の奥底からなにものかを湧き出させるケチャ、ガムランの地バリ島で、ひとりの女性が圧し殺したセックスへの希求を開眼させる…となると『エマニエル夫人』的ポルノグラフィを思わせるが、そんな似非エキゾティシズムとは無縁。ここにあるのは斎藤工が予感させる「死」。杉野希妃が体現する妊娠→出産という「生」。そのはざまにある主人公・三津谷葉子も、ただ欲求不満を抱えているというのでなく、愛する者との間の子供を残せないという焦燥や絶望ゆえ、不意の性に駆り立てられるという屈折した流れがきちんと受け取れる演出が見事。インドネシアの俊英エドウィン作品のキャメラマン、シディ・サレーも絶妙のフレーミング・センス。
この短評にはネタバレを含んでいます