イニシエーション・ラブ (2015):映画短評
イニシエーション・ラブ (2015)ライター2人の平均評価: 3.5
「A面で恋をして」は81年、ナイアガラ・トライアングルの名曲
かつて世の中に“普通”に、Side-AとSide-Bの両面が存在していたことを思いおこさせる映画。もし二本立て興行が今も続いていれば、無謀なお遊びを許されてた“併映作”がハマっただろうなァ〜。
舞台設定の前年、1985年に堤監督は『コラーッ!とんねるず』の演出を(変名で)担当、その一回目のオープニング、わざと音声を絞り、視聴者がボリュームを上げる頃合いを見計らって「バ〜カっ!!」ととんねるずの大声で驚かせた。そういうノリの復活。ヒット曲の使い方はこれも、パロディと親和性の両面あり。Wヒロイン、木村文乃は80年代浅野ゆう子風を巧く再現しているが、前田敦子(のキャラ)は時代性を超えたものだ。
みどころはラスト5分だけじゃない!
原作の叙述トリックを、編集による映像トリックに変えたところで、「そりゃダマされるわ!」という印象は変わらず、謎のキャスト“亜蘭澄司”の存在もギミックの一部に過ぎない。というわけで、本作の面白さはラスト5分だけではない。監督を舞台となる80年代、秋元康やとんねるずらとともに、ギョーカイでブイブイ言わせていた堤幸彦が務めたということだ。当時のリアルな空気感を醸し出しながら描かれる“通過儀礼の恋”は、ホイチョイムービーに近いモノも感じさせる。「男女7人」なキャスティングやアイテム、ヒット曲など、アラフォー以上には涙モノだが、下の世代には『タマ子』超えの女優・前田敦子が堪能できる一本だといえるだろう。