ジミー、野を駆ける伝説 (2014):映画短評
ジミー、野を駆ける伝説 (2014)ライター2人の平均評価: 4.5
80年以上前の出来事に、今も変わらぬ権力の実態を見る
アイルランドの政治活動家ジミー・グラルトンの実話を基にした作品。貧困に苦しむ庶民のために娯楽と教育の場を提供したジミーは、それゆえに地元の有力者やカトリック教会を敵に回してしまう
大地主や資本家、そして教会の牧師らが最も恐れたもの。それは民衆が高い知識を得ること、人生に喜びや楽しみを見出すこと、その結果として自由と権利を主張することだ。
名匠ケン・ローチ監督は、80年以上前のアイルランドで起きた出来事に、今も変わらぬ権力の実態を投影する。その鋭い眼差しには脱帽するばかりだ。また、かつてのレッドフォードを彷彿とさせる、主演バリー・フォードの知的な美青年ぶりと誠実な佇まいも印象深い。
庶民性の純度を高めた名匠の境地
ケン・ローチがこれまでも政治的かつプロレタリアート的な作品を撮ってきたことは周知の通り。庶民的な闘争という点では『大地と自由』『麦の穂をゆらす風』に近いがイデオロギーに偏らず、悲劇に寄りすぎないバランスがいい。
ドラマの主軸は主人公ジミーと彼を支える人々の権力との闘争だが、舞台は小さな村社会。そのためか主人公たちはもちろん、悪役である神父らの人間ドラマもクリアに伝わってくる。どのキャラクターの事情も理解できるのだ。
その中でまぶしいのは、やはり主人公の姿。ジミーの凛とした姿勢、そしてそれを受け継ぐ若者たちの意志に希望がうかがえ、図らずも熱くなった。