マジック・イン・ムーンライト (2014):映画短評
マジック・イン・ムーンライト (2014)ライター2人の平均評価: 3.5
アール・デコでコール・ポーターでどこまでもロマンチック
月光のマジック、とはつまり、暗いところに光が差して魔法が起きる、と、つまり映画のこと。ヒロインが「本当よりも、ウソのほうが素敵でしょ?」と言うのも、映画は素敵なウソだから。そもそも主人公は奇術師、ヒロインは霊媒師で、どちらも上手なウソが生業。そんな本作だから、ちゃんと素敵なウソでウットリさせてくれる。
どこまでも古典的でロマンチック。コール・ポーターの名曲、アール・デコな女性の衣服はみな、柔らかな薄い素材を重ねた明るい色。南フランスの富豪の屋敷、庭園、ダンスパーティ。素直ではない男女の恋の駆け引き。すべてが定番なのに、どうやらウットリするには定番だけで充分なようなのだ。
設定も展開も配役も絶妙なラブコメの鏡
誤解と勘違い、スノッブ批判をコミカルに料理し、気持ち良いエンディングへと誘う。アレンお得意の題材だが、こうも気持ちのよいロマンチックコディは久しぶり。『ミッドナイト・イン・パリ』のレトロ感と『タロットカード殺人事件』の軽さの融合といえば通りが早いか。
現実主義のマジシャンという、ある意味、矛盾する主人公のキャラに風刺を持たせつつ、その思想が恋によって二転三転。その軽やかな描写に職人芸がにじみ出て、アレン信者ならずともニヤリとさせる心憎さだ
コリン・ファースとエマ・ストーンの組み合わせの化学反応も活きて、最後の最後まで楽しめた。ラブコメはこうあるべしというお手本のような逸品。