ふたりの旅路 (2015):映画短評
ふたりの旅路 (2015)古都リガを訪れた日本人の『ロスト・イン・トランスレーション』
日本とラトヴィアの文化交流で古都リガを訪れた女性の前に、神戸の震災で亡くなった夫の幽霊が現われる。深い喪失感に囚われ続けた人間の再生物語なのだが、全編に渡ってシュールでトボけたトーンのユーモアが貫かれており、ソフィア・コッポラの『ロスト・イン・トランスレーション』にも似た味わいがある。
特筆すべきは、洗練の極みとも言うべき演出。細部まで計算され独特のカメラアングルが、リガと神戸それぞれの街並みや空間の美しさを際立たせ、そこへ桃井かおりとイッセー尾形の抑制を利かせた芝居を配することで、日本的な侘び寂びの情緒すら醸し出す。35年前に家族でリガを旅した筆者としては、その風情ある景色も懐かしい。
この短評にはネタバレを含んでいます