リアル鬼ごっこ (2015):映画短評
リアル鬼ごっこ (2015)ライター3人の平均評価: 3
トリンドル玲奈の大熱演は嬉しい驚き
過去シリーズの予備知識ナシで臨んだが、そもそも原作とは関連性のない園子温監督のオリジナル脚本なので、筆者を含めた一見さんでも全く支障はないだろう。
突然のつむじ風で女子高生たちの胴体が次々と吹っ飛ばされるオープニングから快調。たった一人生き残ったヒロインが全力で逃げ回りながら、別々の女の子たちの人生を体験していく。言うなれば、未来への不安や性の目覚めに揺れ動く思春期の女性心理を投影したシュールな残酷ファンタジーだ。
主演トリンドル玲奈の予想外の大熱演は嬉しい驚き。ラストのサプライズ・ゲストも、なるほどそういうことね…とニンマリ。テーマはありがちだが、企画物としては上手くまとめられている。
トリプル・ヒロインと逃げ切った85分
『自殺サークル』を思い出すショッキングなオープニングが物語るように、『愛のむきだし』以前の園子温監督作の空気感が全編を覆う。そのため、果たしてこれが「リアル鬼ごっこ」かどうか、という仕上がりになっており、完全にフェイクなキャッチフレーズに惹かれた原作ファンが手放しで受け入れるのはなかなか難しいだろう。さらに、37人の女性キャストに加わった唖然してしまうほどのサプライズなど、あえて監督が観客に与えるある種の嫌悪感もアリ。とはいえ、パンチラ、ブラモロなど、原作ファンの男子学生の心をわしづかみにする要素は計算済み。とにかく、ひたすら逃げるトリプル・ヒロイン同様、逃げ切った感が否めない85分である。
少女論じゃなかった
今回のターゲットは女子高生、ヒロインは3人、出演者37名が女子、とくれば一種の"少女論"なのかと思ってしまうが、ハズレた。一種の女子高生論ではあるが、"少女"というものには関係がない。脚本は監督によるオリジナル。タイトルに触発され、あえて原作は読まず、前からやりたかったネタを使った脚本とのことなので、監督が"少女"に興味がないということだろう。トリッキーな仕掛けが楽しめる謎解きミステリー。ビジュアルもかなり派手。この監督らしい、製作費とは関係ない、よい意味でのチープな味わいが満喫できる。日本のバンド、MONOによる劇中音楽の'90年代UKギタポ系ギターの音が甘酸っぱい。