メイズ・ランナー (2014):映画短評
メイズ・ランナー (2014)ライター5人の平均評価: 2.8
“迷路”感に乏しすぎる迷路って。
いや、途中まではそれなりに楽しい出来ではあるのだが、開巻時にはあった不条理感が次第に条理っぽい展開へ移行していくにつれ関心がぼろぼろと剥がれ落ちていく。『ラブ・アクチュアリー』のT.ブロディ=サングスターや『なんちゃって家族』のW.ポールターなど、もと子役陣の成長はしっかり見てとれるものの、主役格のD.オブライエンとK.スコデラリオが美男美女なだけで演技的にもキャラ的にもほとんど印象に残らないのが痛い。蜘蛛型機械獣グリーバーはじめ設定の甘さは覆い難く、終盤の急展開をみてもどうやら風呂敷拡げ過ぎな世界観がありありで、この先が楽しみ、とはとても言えないのだな。
3部作に付き合える自信はあるか?
ディストピア版『蠅の王』な世界で、巨大迷路と化した『CUBE』が展開される原作ゆえ、期待してしまうが、そこは『ハンガーゲーム』ありきの企画。「3作目まで引っ張る!」という制作サイドの魂胆から、あまりにツッコミどころ満載な脚本と、荷が重すぎた長編デビュー監督の戸惑いが見え隠れ。よって、中盤からは謎解き云々より、『ラブ・アクチュアリー』のあのコが! 『なんちゃって家族』の童貞が!といった子役の成長を見守る程度しか楽しめない。ストーリー上、大御所俳優がキャスティングされないこともユルさが際立った理由だが、制作陣は『ザ・ゲート』など、亜流『グーニーズ』なB級映画の千本ノックをすべき!
全貌が明らかにならないので最後まで興味津々
いわゆるディストピアもので、冒頭のエレベーター場面から説明的なくだりはなく、最後まで見る側の興味を惹き付ける。ネタを小出しにする作り方にまんまとハマった! 謎の場所に放り込まれた少年たちのサバイバルは『CUBE』を彷彿させたが、迷路のスケールと残酷さは段違い。CGIを使ったビジュアルは素晴らしく、迷路にいる怪物のエイリアン感もハンパない。少年たちの葛藤というドラマ部分もきちんと描かれていて、若手俳優の頑張りは好感度大。個人的には主人公と敵対する立場になるギャリー役のウィル・ポールターが気になる。『ダイヴァージェント』シリーズでいうところのマイルズ・テラー的な存在となるか? 早く続きが見たい。
リアルが宿る21世紀型ジュブナイル
ヤングアダルト小説の映画化ではあるが、筆者のような大人にも面白く見ることができたのは、SFジュブナイルの匂いが感じ取られたからに他ならない。
“壁”“サバイバル”“モンスター”等のSF設定の濃密さはもちろん、『蝿の王』的な男子コミュニティ内の葛藤も魅力的で、ヒエラルキーのリアルを十分に感じ取ることができる。女子が放り込まれたことで事態が面倒になるのも物語のエッセンスとして面白い。
続編を意識した作りで、スッキリと終わらない点に何アリと見る向きもあろうが、個人的には次に期待を抱かせるに十分な結末だった。ジュブナイルに不可欠のワクワク感が、ここにはある。
いつものティーン・アドベンチャーかと思ったらヒネリあり
「ハンガー・ゲーム」も「ダイバージェント」も本作も、全米ティーン層の人気シリーズはみな、主人公が所属する世界の仕組みを打破しようとする。変えようとするのではなく、とりあえず、壊そうとする。現代の子供達にとって、アドベンチャーとは、未知の世界の探訪ではなく、そういう形をしているようだ。にしても本作の"生存のために巨大な迷路の仕組みを解かなくてはならない"という設定は、あまりにも直球ではないかと思ったら、ちゃんとヒネリがあった。まず、主人公の立ち位置が、他作品とはちょっと違う。また、主人公が属する集団にも別の意見がある。さらに、ある謎解きが同時進行して、ストーリーで引っ張っていってくれる。