ソレダケ/that's it (2015):映画短評
ソレダケ/that's it (2015)ライター2人の平均評価: 3.5
タランティーノも敬愛する鬼才が、狂気の原点回帰
あってないようなストーリー&爆音のイベント感ゆえ、『シャッフル』の4倍弱、『ELECTRIC DRAGON 80000V』の2倍弱の尺が持つのか、という不安はある。だが、そこは今や日本映画界を担う染谷将太VS綾野剛の存在感。『生きてるものはいないのか』『シャニダールの花』のときとは段違いで、2人(+α)が銃を向け合うクライマックスでは、カタルシスが一気に漲る。しかも、辻本貴則のガンエフェクトによる銃撃戦は、まるで石井監督自身が影響を与えたタランティーノに喧嘩でも売っているようだ。間違いなく2015年は、ジョージ・ミラーとともに石井監督が“狂気の原点回帰”を図った年として、映画史に刻みこまれた!
此岸からぶっ放すバズーカ音響のレクイエム
染谷将太が、走る。モノクロからカラーへの転換。『爆裂都市』かと思いきや、これはまるで『シャッフル』(81年)! 石井岳龍はbloodthirsty butchersの音を受け、2013年に急逝した吉村秀樹の愛したハードコアなPUNK YEARS=「聰亙」時代に自ら回帰した。いや、初期騒動を再び生き直したと言うべきか。
そのトライに旬の役者陣が集まった祝祭感がたまらない。劇中コミック『デストロイヤー』を使ったアクションでは水野絵梨奈の身体能力も活かされる。
「音楽映画」ではなく、あくまで「音楽×映画」。この世とあの世の境を超えた、宇宙的なコラボレーションの魂が、死んでも死なない主人公に宿る。