ビッグゲーム 大統領と少年ハンター (2014):映画短評
ビッグゲーム 大統領と少年ハンター (2014)ライター4人の平均評価: 3.3
痛烈なアメリカ批判を込めたフィンランド産アクション
フィンランド上空でテロリストに撃墜された米大統領専用機。辛くも脱出した大統領を守るべく、たまたま現場に居合わせた13歳の少年ハンターが立ち上がる。
表向きは、未熟な少年が苦難と危機を乗り越えることによって一人前の男へ成長していくハリウッド風の冒険アクション(実際はフィンランド中心の合作映画)。しかし、物語の根底に流れているのは痛烈なアメリカ批判だ。
自ら戦争や紛争の火種をばら撒いておきながら、世界の警察を気取って平然と他国に土足で踏み込んでくるアメリカ。その国家元首である大統領に、弓矢しか持たないフィランドの少年が本当の正義とは、本当の勇気とは何かを体を張って教える。これがなかなか痛快!
サミュエルが大統領なんて、そもそもありえないし
サミュエル・L・ジャクソン主演作だがアメリカ映画ではなく、フィンランド主体で製作されているのがミソ。ハリウッドの定石どおりにいかないのは頭に入れておきたい。
米大統領と北欧の少年のテロ集団とのバトルはインディ・ジョーンズばりのアクションによりスリルを加速させるが、かといって紋切り型ではない。最後まで見ると、アメリカはダメな国じゃん……という異国の視点が明確になり、そこに興味深いものを感じる。
そもそもワルなサミュエルが大統領役を演じるのだからキャラ的にダメダメなのは明白だ。むしろ少年の方が主人公で、ビョーク似のこの男の子の鋭いまなざしが世界の嘘を見抜くかのようで妙味。
フィンランド少年の強いまなざしがいい
このハンサムではない13歳のフィンランド少年の、強いまなざしがいい。雪山の澄んだ大気と同じ、彼の気持ちの潔さがいい。サミュエル・L・ジャクソン演じる米大統領の、ダメ人間かもしれないが可愛げのあるところもいい感じ。この2人の異色バディムービーというだけで充分楽しいアクション。
同時に、この2人が象徴する2つの異なる価値観の物語。13歳になったら山に狩りに行って自分に相応しい獲物を手に入れる文化 VS 誰もが大統領を目指すべき文化/ 強くなろうとすること VS 強く見せようとすること、という対比が描かれて行く。映画はそのどちらも否定も肯定もしない。2人が、それぞれに成長していくのが爽快だ。
レニー・ハーリンになれなかったよ
山岳地帯に取り残された大統領とシカ狩り中の地元少年がテロに挑む、いくらでも面白くなりそうな設定だ。しかも、荒削りながら妙なパワーで押し切った『レア・エクスポーツ~囚われのサンタクロース~』の監督&顔面凶器な子役コンビながら、手離しで喜べない。恐ろしいほどヘタレな大統領(とはいえ、相変わらず能書きは垂れる)に、それを司令室で衛星画像を見守るだけの無能すぎるアメリカ。おまけに、91分の尺ながらユルユルな展開に、イライラしっぱなし。子供騙しにさえならなかった感もあり、フィンランド映画がハリウッド大作を意識しすぎて、見事なまでに撃沈。監督も“第二のレニー・ハーリン”になれなかったよ。