チャップリンからの贈りもの (2014):映画短評
チャップリンからの贈りもの (2014)ライター2人の平均評価: 3
監督と作曲家の齟齬がちょっとモノ凄い(笑)。
御大ミシェル・ルグランの音楽が、他の全要素すべてを超えて凄まじく挑戦的。『ライムライト』のメロディを随所で用いつつも素晴らしくゴージャスでときに前衛的な編曲(クラシカルなコーラス+フリージャズ+パイプオルガンって!)を聴かせてくれるのだが、演出の熱度が全然それに応えてくれない。そんな音楽はいらないよ、とでもいうように終始淡々として水と油。かといって『神々と男たち』で見せたような緊迫感はまるでなく、実際の事件もそうだったと思われるようなグダグダ感ばかり目立つうえに、サーカスのくだりなど本筋から離れたチャップリン・オマージュが挟まれたりしておそろしく散漫。でもこのアンバランス、嫌いじゃないのよね。
チャップリン映画のペーソスを継承した人情喜劇
チャップリンの遺体が墓地から誘拐されて身代金を要求される…という’78年にスイスで実際に起きた事件を下敷きにした人情喜劇である。
貧しい移民の犯人コンビ、幼い少女との切ない絆(『キッド』は少年だったけど)、心の拠り所となるサーカス一座など、全編に渡って散りばめられたチャップリン映画へのオマージュに思わずニンマリ。慣れない犯罪に手を染めて右往左往する主人公たちだが、その弱者に寄り添った可笑しくも哀しきペーソスはチャップリン喜劇の真髄そのものと言えよう。
と同時に、これは移民問題や経済格差の拡大に揺れる現代欧州の混沌を間接的に風刺した寓話でもある。なぜ今この題材なのか。作り手の意図は明確だ。