ボーダレス ぼくの船の国境線 (2014):映画短評
ボーダレス ぼくの船の国境線 (2014)たった三人と赤ん坊の、あまりに感動的な「世界の縮図」
廃船の中で生きるひとりの少年がいる。自分で魚を釣って、捌いて干物にして、売れるものは日用品に替えて……。そういったサバイバル生活の様子が“楽しそう”に見えるのが魅力的。とはいえ、このたくましさの裏にあるのは、少年がどれだけ過酷な状況を生き抜いてきたか――というイラン・イラクの混沌である。
本作の特徴は寡黙さだ。最初の20分は台詞がないし、その後はペルシャ語、アラビア語、英語が飛び交い、互いの言語は通じない。しかしだからこそ、映画言語が雄弁になる。甲板に張られたロープ(国境)もやがて取り払われ、濃密かつ優しい映画空間の中で“ボーダレス”の理想が提示される。新人監督A・アスガリの演出は完璧だ!
この短評にはネタバレを含んでいます