コンテンダー (2015):映画短評
コンテンダー (2015)ライター2人の平均評価: 3
理想を貫くためには時として悪魔との妥協も必要
2010年に起きたメキシコ湾原油流出事件をモデルに、多大な損害を被った漁業関係者の救済に奔走する実直な政治家が、自身に降りかかったセックス・スキャンダルと石油利権の闇に翻弄されていく。
政治には徹底してクリーンだけど、下半身はかなり優柔不断。そんなある意味で人間臭い主人公が、崇高な理想を貫くためには時として悪魔との妥協も必要だということを学ぶことになる。人間も社会も決して完璧ではないというわけだ。
まあ、当たり前と言えば当たり前のことを描いているわけだが、下手に陰謀だ裏工作だと話を盛らず、リアリズムに徹しようという姿勢は評価できる。その分、とても地味な映画になったことも否めないが。
N・ケイジ印、それでも意外に(?)シリアス
ニコラス・ケイジ主演作というと、つい突飛な映画を連想してしまいがちだが、本作はかなり異質。スキャンダルによる失墜から人気回復へと向かう、ある政治家のV字ルートの人間ドラマが繰り広げられる。
不倫報道によって失われた名誉は企業との癒着によって再生し、良識や正義感は妥協によって影を薄くする。そんな政治の土壌を浮かび上がらせた社会派ドラマのエッセンスは、なかなか硬派。
とはいえ主人公のもがきにスリルが宿り、メッセージ性よりもドラマが先立つので小難しさはない。ケイジが主人公を演じたことで、ある種の愚直さがにじみ出た点は見る者の興味を引く上で効果的だ。小品だが意外な拾いモノ。