バンクシー・ダズ・ニューヨーク (2014):映画短評
バンクシー・ダズ・ニューヨーク (2014)ライター2人の平均評価: 4
お宝よりもすごかったミレニアル的宝探しの狂騒
バンクシーがニューヨークに降臨した昨年10月、現地で「バンクシーのアートが見れたらラッキー」程度の気持ちで情報チェックしていたけれど……。遭遇できなくて逆にラッキーと思わせたのが本作だ。作品を追うファンが東奔西走し、作品も塗りつぶされたり盗まれたり、チンピラの金儲けの道具にされたり。お宝探しの狂騒こそが彼のレジデンシーだったのだ。実にミレニアル的なり。アート公表の場を美術館からストリートに変えたバンクシーは今や、SNSを利用してネット上に作品を保管する。ファン撮影の映像やYouTube素材、ツイッター・フィード、ニュース映像に新規インタビューを加えての構成も実に今っぽいドキュメンタリーだ。
N.Y.×ストリートアート、その幸福と苦い変容
ハイレッド・センターの「東京ミキサー計画」に倣えば“N.Y.ミキサー計画”の一部始終。これは実に親切なバンクシー入門であり、ストリートアートへの道案内だ。傑作『イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ』が日本公開された時、どこまでがリアルでフェイクかという線引きが議論されたが、その攪乱を呼び起こす「反応」も含めて作品なんだ、という核が明快に判るはず。
『ビル・カニンガム~』や『アイリス・アプフェル!』などN.Y.とアートの幸福な関わりを捉えた作品群に本作も含まれるだろうが、しかしグラフィティの聖地「ファイヴ・ポインツ」の取り壊しという一幕が用意される。監督の問題提起はここに集中しているのでは。