ザ・メタルイヤーズ (1988):映画短評
ザ・メタルイヤーズ (1988)ライター2人の平均評価: 4
実に面白い'80年代L.A.メタルシーンの乱痴気騒ぎ
L.A.ロックシーンをリアルタイムに捉えたドキュメンタリー第2弾は、前作のアングラなパンクの世界とは一変、ケバケバしくグラマラスな’80年代L.A.メタルの狂乱を映し出す。
まさにセックス・ドラッグ&ロックンロール。本人たちは金が目的じゃない、薬に手を出しちゃいかんと言いつつ、豪邸のジャグジーで金髪ネエチャンはべらせ贅沢三昧なサクセスを満喫。パンクはディスコに落ちぶれた…って、あんたらのやっていることはそれ以上に下世話ですけど!と突っ込みたくもなる(笑)。
出演者たちは完成した映画に大不満だったらしいが、彼らにしてみりゃバツが悪かったのだろう。そういう意味でも三部作中でベストの面白さだ。
『アンヴィル!』と併せて観ると面白いかも
ガールズ、ガールズ、ガールズ……な内容だが、モトリー・クルーは一切出てこない。懐かしの「L.A.メタル」の記録を期待すると、代表選手がほぼ姿を見せないので肩透かしを食らう。そちら面で嬉しかったのは、ファスター・プッシーキャットのテイミー・ダウンが経営していた「キャット・ハウス」の様子が見られる事くらいか。
この枠組みのユルさは、スフィーリス監督が音楽より社会学的な興味でカメラを回していたことの端的な証左だ。『ザ・デクライン』とは真逆に、ロックスターを目指す上昇志向剥き出しの連中を映し出す。歌舞伎町のホスト的な野心をたぎらせる男子達と、冷静に提言するオジーやレミーなど「先輩」陣の対比が面白い。