或る終焉 (2015):映画短評
或る終焉 (2015)ライター2人の平均評価: 4.5
安易な感動や美談を寄せ付けない厳然たる死の残酷
死を目前に控えた末期患者の世話をする看護師の日常を克明に描いた本作は、近年特に注目されている終末医療をテーマとしつつ、普遍的な生と死の問題に深く切り込んでいく。
時として患者の家族からあらぬ誤解を招くほど、看護にのめり込む主人公。しかし明確な理由は説明されない。ただ断片的な情報だけが与えられ、カメラは当事者同士にしか分からない患者と看護師の密接な関係を淡々と映し出す。
音楽スコアを含めた作劇的な要素の一切を排除し、誰もが避けて通れない死というものの残酷を真正面から見つめた作品。その冷徹なまでのリアリズムには、安易な感動や美談をまるで寄せ付けない説得力がある。
世界把握の深度が並ではない!
見事だと思う。ティム・ロス扮する寡黙な男は終末期患者の看護師だが、まるでハードボイルドの主人公のようだ。彼は誰よりも死と親密に接し、ある種ギリギリの淵を常に朦朧とした感覚で歩いている。
「看護」と「介護」は根本的に違う、という事をよく訊く。前者は治療で、後者は安らぎを提供するものだと。主人公は自主的に両方をカヴァーしようとするが、そのケアの過剰さゆえに職務の枠からはみ出す。また彼の行為は善意以上に、自らの心の穴や隙間を埋めるための衝動だ――という視点が実に生々しい。
監督の俊英M・フランコは前作『父の秘密』に続き、旬の社会問題を良識や倫理ではなく人間の性から照射する。やはり凄い才能だ。