さとにきたらええやん (2015):映画短評
さとにきたらええやん (2015)ライター2人の平均評価: 4.5
不寛容な今の日本社会に必要なものがここにある
様々な事情から家にいることのできない子供たちを、一時的もしくは長期的に預かり養育する施設。そんな大阪は釜ヶ崎にある「こどもの里」の日常を丹念に記録したドキュメンタリーだ。
印象的だったのは、ここが子供だけでなく親にとっても大切な拠りどころとなっていること。心の病から子育てはおろか働くことすらできない、仕事と家庭の両立の重圧から子供に手をあげてしまう自分が怖い。そんな親たちに、子どもを預かる里の職員らが優しく言う。無理して頑張らなくてもいいんだよ、と。
すっかり不寛容な空気に覆い尽くされた昨今の日本。里に集う子供たちの生き生きとした笑顔が、今の我々に必要なものを雄弁に物語っている。
政治家とか行政の担当者とか、”さと”を見たらええやん
孤食に待機児童、幼児虐待と、子育ての悩みは尽きない。そこに登場したミニ児童館「こどもの里」に密着した本作。ここは子供の面倒を看るだけではなく、悩める親たちの駆け込み寺でもあるらしい。老若男女が自由に出入りし、地域全体で子育てをサポート。しかも利用料無料で運営しているという。なんて健全な!と羨望すら抱く。
場所は大阪・釜ヶ崎。運営の苦労は、並大抵なものではないだろう。”釜”は偏見を持って見られがちで、その目は子供たちにも向けられるかもしれない。
だがここには、我々が日々の暮らしで忘れがちなモノがたくさん残っている。彼らにこそ手厚い支援が向けられる社会であって欲しいと願わずにはいられない。