ひるね姫 ~知らないワタシの物語~ (2017):映画短評
ひるね姫 ~知らないワタシの物語~ (2017)ライター2人の平均評価: 4
夢と現実が不思議な形で入り混じっていく
夢と現実と物語が、並行して描かれるのではなく、少しずつ入り混じっていく。その混じり方が魅力。ふと気づくと、片方の一部が、もう一方に何気なく混入していたりする。混じり方が次第に変化していく。そんな異なる世界が違和感なく混在する世界を描くのに、アニメという手法が効果を発揮する。
そうやって緩やかにねじれながら展開していくストーリーには、密かにある仕掛けが施されているが、そのヒントは、最初からちゃんとあちこちに散りばめられている。
そんな世界を旅するヒロインのキャラクターがいい。ひるねが好きでどこか天然な女の子が、気負わず前に進んで行く。その歩みの柔らかさが物語に似合っている。
日常を起点とする三世代ファンタジーは神山健治作品の第四形態!
緻密に仕組んだ少女の夢と現実の交錯によって、三世代にわたるファミリーストーリーを解明していく画期的なファンタジーだ。夢の世界は、祖父が築き上げた窮屈な高度テクノロジー社会に、虚構や創造を愛する父が反旗を翻すイメージ。その夢が知られざる真実を娘に示唆していく過程がスリリング。テクノロジーの発展をハードとソフトの相克と捉えない、屈託なき娘のしなやかな想像力は、世代間の綻びを修復する。神山健治作品が、同時代の観客に合わせて進化した。世界と個の関係を描いた『攻殻S.A.C.』以降を第二形態、世代間の差異を描いた『東のエデン』を第三形態とすれば、日常を起点とする本作は神山作品の第四形態に当たるだろう。