ソング・オブ・ラホール (2015):映画短評
ソング・オブ・ラホール (2015)ライター2人の平均評価: 4
世代も国境も軽々と超えてみせる音楽の力に感動!
かつて豊かな芸術文化を誇ったパキスタンの都市ラホール。しかし’70年代の保守的な軍事政権によって映画も音楽も衰退し、その僅かな残り火も現在はイスラム過激派の影響で存続が危ぶまれている。そんな現状を打破すべく、伝統音楽とジャズの融合で世界に挑戦する音楽家たちの姿を記録したドキュメンタリーだ。
どれだけ虐げられても音楽への愛を忘れない彼らの強い信念に心震え、民族の伝統と家族の誇りを次世代へ繋ぐという親子の熱い絆に涙し、その圧倒的に素晴らしい演奏に思わず笑みがこぼれる。「人は信じるものの中に神を見出す」などなど、弾圧と闘い続けてきた人々だからこその名言にも胸を打たれる。芸術を愛する全ての人必見。
音楽自身の持つ力が伝わってくる
音楽が、なにかのウイルスのように、状況に合う形に進化し続け、増殖し続け、より広い範囲に伝播していく。そういう音楽自身の持つ力が、画面から伝わってくる。
パキスタンの都市ラホールでかつては栄えた伝統音楽が、過激なイスラム原理主義政権の影響で衰退する。だが、伝統楽器を7代前から演奏してきた奏者や6歳から修行してきた奏者たちが、自分たちの楽器と奏法で、"即興演奏"という共通点を持つジャズを演奏することで諸外国の注目を集め、自分たちの音楽を生き延びさせる。ある奏者は「自分で作った楽器は、自分の魂より大切に思える」と言う。こういう時に"魂"という言葉が自然に出るところで鳴る音楽がある。