ニュースの真相 (2015):映画短評
ニュースの真相 (2015)ライター2人の平均評価: 4.5
世紀の誤報騒動から浮かび上がる大手メディアの功罪
再選を目指すブッシュ政権の痛手となるはずだったニュース番組の独占スクープが誤報として糾弾され、看板アンカーのダン・ラザーと制作スタッフのキャリアを葬り去ることになった実話の映画化だ。
極秘文書は本物だったのか偽物だったのか、リベラル派ラザーを潰すために共和党が仕掛けた巧妙な罠だったのか。真相は闇の中だが、背後に何らかの思惑が働いていただろうことは想像に難くない。
真実を追求するニュース番組が金になるバラエティ番組に駆逐され、大手メディアが利益のため政権に配慮する米テレビ業界。そこへトドメを刺したのがこの事件だったと言われるが、日本のジャーナリズムの現状を見るとまるで他人事とは思えない。
アメリカのメディアを“たられば”気分にさせる快作
ジョージ・W・ブッシュ大統領の再選活動中に浮上した軍歴詐称疑惑をめぐる実話ドラマを、スッパ抜いた女性プロデューサー側から描き、疑惑は真実と思わせる。調査報道の矜持を貫くスタッフVS視聴率を求めるTV局といった単純な図式ではなく、911以降に増長した“強いアメリカ”を求める大衆という名のブロガーに便乗した大手メディアによる本末転倒なバッシングが恐ろしい。この事件でアンカーマンのキャリアを絶たれたダン・ラザーが報道の務めを語るシーンとC・ブランシェット演じるプロデューサーが内部調査委員会で叫ぶ言葉が心に沁みる。ISISの台頭や難民問題を報道するアメリカのジャーナリストはきっと今、後悔しきりだろう。