鋼の錬金術師 (2017):映画短評
鋼の錬金術師 (2017)ライター3人の平均評価: 2.7
松雪泰子の悪役ぶりは本作の助演女優賞もの!
キャスト陣の好演もあって貴重な和製ファンタジーとして楽しめたし、原作ファンとしても、松雪泰子が演じたラストなどホムンクルスの3人はイメージとも特に合っていて大健闘の出来だと思って観た一方、原作の要素を詰め込み過ぎず、まずはもっと世界観やキャラクターの魅力などを活劇として楽しませる作品を観たかったとも思う。また、架空の世界なので、日本人だけしかいないのもよいとは思うのだが、イタリアでの撮影がテーマパークで撮ったかのように見えてしまったり、冒頭の少年時代の子役の芝居が残念なことなどの違和感をどれだけ早く納得して受け入れられるかが、本作を楽しめるかどうかの分かれ目になりそう。
ある意味、かなり冒険した実写化ではあるかも
人気コミックやアニメの実写化というのは、既に確立された原作のビジュアルイメージとどう向き合うのか、そこが一つの大きなハードルだと思うのだが、恐らくこの作品は特に悩ましいと言えよう。
登場人物の名前や舞台設定はもちろん、美術も衣装もまるごとヨーロッパ風、ロケ地も風光明媚なイタリアの街、しかし役者は全て日本人でセリフも日本語。実写ゆえ仕方ないだろうとの意見もあるだろうが、しかしだからこそ大きな違和感は拭えない。そこを受け入れられるか否かが最大の難関だ。
ただ、日本映画が不得意とするVFXを駆使したスペクタクルシーンの仕上がりは悪くない。アイドルとしてのイメージが功を奏した山田涼介もハマリ役。
怒濤のオープニングにテンション上がり、その後…
原作ファンは、実写化に何を期待するのか。キャストが原作キャラそっくりに演じればうれしいのか。同じ決めポーズをすればいいのか。いや、もっと違う驚きや興奮を味わいたいのでは?
オープニングこそ、曽利監督らしい斬新&怒濤のアクションに興奮が高まるが、その後は会話のやりとりで進むシーンが多く、終盤、怪しさ満点になるものの、その時点でテンションの糸は切れていた。設定を説明したいのは理解できるが、映画全体が乗っていかないもどかしさが……。
そんななか、松雪泰子は『マイティ・ソー バトルロイヤル』のケイト・ブランシェットに匹敵するインパクト。実写化の意味はこういう部分にあると、彼女だけで★ひとつ進呈したい。